腰部椎間板ヘルニアの手術でわかっていること

手術風景
エビデンス
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を分析した結果次の6点が判明した。
(1)椎間板ヘルニアが確認された2ヶ月間の保存療法に反応しない坐骨神経痛患者はそのまま保存療法を続けるよりラブ法を実施した方が早く改善する。http://1.usa.gov/q1HPOA
腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法の場合は2ヶ月ではなくて2年の猶予期間があります。
(2)4年~10年の長期成績という観点から見るとラブ法と保存療法の効果に差は認められない。(3)顕微鏡下髄核摘出術と経皮的髄核摘出術が腰痛に効果があるという証拠はない。
(4)経皮的髄核摘出術はラブ法より再手術率が高い。http://1.usa.gov/q1HPOA
要するに椎間板ヘルニアは日にち薬が有効だということです。最近の腰痛診療ガイドラインでは手術はガイドラインに従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、激しい痛みが続く患者に限るべきと勧告しています。
(5)椎間板摘出術は比較的安全な治療法とされているが、これまで考えられていた以上に再手術を必要とする例が多い。
(6)椎間板ヘルニアに対する手術成績は、心理社会的因子の影響を強く受けている。http://1.usa.gov/q1HPOA
手術を受けた患者の5~50%は症状がまったく変わらないか、あるいはさらに悪化することが判明しています。
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。http://1.usa.gov/q1HPOA
椎間板ヘルニアの手術成績は長期的にみれば保存療法と変わらないことを第一級のエビデンスが証明しているのです。「椎間板ヘルニア=手術」という思い込みを頭の中から消去しましょう。
解釈
坐骨神経痛の症状の「お尻から脚の痛みやしびれ」で手術を選択するというのはかなり限られた条件の場合です。長期成績では効果はなく、短期成績にしか効果がありません。
リスクとベネフィットを考えた場合に、割に合わない印象です。それでも手術を選択される場合は納得の上で受けてください。
例外:馬尾症候群や進行性の麻痺に関しては手術が必要です。主訴が「動けない・感覚がない」の時は要注意です。
新しい腰痛の概念に基ずく治療が有効です。
新しい腰痛概念とは
これまでは「生物学的損傷」という画像の異常所見や肉体への負担が原因というものでした。それを「生物・心理・社会的疼痛症候群」という心理的要因や社会的要因も原因であるというものです。
治療
原因が一つではなく、いくつかの要因が重なって、絡み合っています。ですから、身体だけでなく、心理的アプローチも含めて多面的に集学的に行うことがとても重要です。単一の治療で改善するのは困難です。