坐骨神経痛に対する硬膜外ステロイド注射
エビデンス
その1
腰下肢痛患者に対する硬膜外ステロイド注射に関する12件のRCT(ランダム化比較試験)をレビューした結果、硬膜外ステロイド注射の効果は明確ではないものの、神経根症状を伴う急性腰下肢痛に限っていえば一時的な効果は望める可能性がある。http://1.usa.gov/okMOHg
その2
硬膜外ステロイド注射は坐骨神経痛患者の費用対効果の高い治療法とされてきたが腰椎や仙骨への硬膜外ステロイド注射に関する二重盲検比較試験はなく、坐骨神経痛に対して有効性を示す根拠がないためオーストラリアでは使用制限を検討。http://1.usa.gov/Kyps98
局所麻酔剤を使うにしろステロイドを使うにしろ、現時点では硬膜外ブロックが有効だという明確なエビデンスは存在しません。
解釈
最新の腰痛診療ガイドラインでは、硬膜外ブロックの短期成績に関するエビデンスは一貫しておらず、長期成績に関するエビデンスも乏しく、脊柱管狭窄症に対してはリスクとベネフィットを評価できるだけのエビデンスがないとされています。
坐骨神経痛というとブロック注射をイメージする方が多いかもしれませんが、効果がはっきりと証明されていません。
「将来、ブロック注射が無くなる」と言う専門家もいます。ブロック注射の件数が増えていますが、坐骨神経痛患者が減らないからです。
ブロック注射を受けても効果がなく大きく落胆してしまう方がいらっしゃいます。おそらく過度な期待があった為かと思います。
ブロック注射を受ける際は、効果があったら運が良かったと思い、効果を感じなかったらそんなものだと思うと良いかもしれません。
新しい腰痛の概念に基づく治療が有効です。
新しい腰痛概念とは
これまでは「生物学的損傷」という画像の異常所見や肉体への負担が原因というものでした。それを「生物・心理・社会的疼痛症候群」という心理的要因や社会的要因も原因であるというものです。
治療
原因が一つではなく、いくつかの要因が重なって、絡み合っています。ですから、身体だけでなく、心理的アプローチも含めて多面的に集学的に行うことがとても重要です。単一の治療で改善するのは困難です。