「職場での腰痛」腰を守るのは時代遅れ
エビデンス
その1
職場で発症した腰痛にはっきりとした職業的原因はほとんどない。明らかな因果関係がないまま労災補償を要する損傷というレッテルを張るのは問題である。http://1.usa.gov/UGpGfEhttp://1.usa.gov/PbF8U3
腰部損傷モデルは企業にとっても患者にとってもメリットはありません。デメリットしかないのであれば速やかに腰部損傷モデルを捨て去るべきでしょう。
その2
腰痛のリスクファクター(生体力学的因子)が同定されているとはいえこれらの危険性はわずかである。すなわち、仕事による身体的負荷によって腰が耐えられなくなることは滅多にない。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
多変量解析を用いた質の高い研究において、腰部損傷および労災補償の原因を説明する上で生体力学的因子が果たす役割は非常に小さく、その影響は統計学的に有意でないことが多いからです。
その3
職場「損傷」という概念は時代錯誤である。職務と大部分の腰痛との間には明らかな因果関係が認められないことから、腰痛などの愁訴を職場「損傷」と呼ぶのはやめるべきである。http://1.usa.gov/UGpGfEhttp://1.usa.gov/PbF8U3
「損傷」という概念を筋骨格系疾患に適用する時代はすでに終わっています。こうした概念は不完全であることに加え、医師が作った誤った考え方でもあります。痛みを訴える労働者を負傷者としてではなく、病人として扱うべき時代になったのです。
その4
労災補償申請をする腰痛患者は、人間工学的原因よりもむしろ他の職場環境の面から説明できる可能性が高い。したがって、職場内における人間工学的以外の原因を探すべきである。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
人間工学的介入は半世紀以上にわたって続けられてきましたが、その有効性を裏付ける強力な証拠はいまだに示されていません。職場における予防的介入は必要だとしても、その中心となるのは心理社会的問題や職場組織の非身体的側面にあると考えられています。
その5
郵便局員に対する腰痛教室(脊椎力学・姿勢・荷物の正しい持ち上げ方に関する教育)の有効性を調査した結果、腰痛発症率・欠勤日数、復職後の再発率のいずれも減少しなかったことから、腰痛教室は時間と費用の無駄であることが判明。http://1.usa.gov/SUrpwE
従来の考え方に基づく腰痛教室(教育プログラム)が腰痛の予防に役立つという証拠がほとんどないにもかかわらず多くの企業が腰痛教室を主な予防法として採用してきたのは、腰痛にかかるコストが高く効果的な治療法がないためですが、腰痛教室を単独で全従業員に適用したとしても腰痛発症率が減少することはなく、結局は無駄な努力に終わるということです。
その6
3つのビスケット工場を対象に心理社会的教育パンフレット(腰痛に対する恐怖心を打ち砕く内容)の有効性を1年間にわたって追跡調査した結果、教育パンフレットを使用した工場は腰痛発症率と欠勤日数が大幅に減少したことを確認。http://1.usa.gov/VPdkFb
これは新たな腰痛概念に基づくパンフレット群、従来の腰痛概念に基づくパンフレット群、パンフレットを配布しない群を比較した研究で、腰痛に対する誤った信念と恐怖回避行動を是正することの有効性が証明されたわけです。生体力学に基づく人間工学的介入では為し得なかったことです。
解釈
腰に負担をかけると傷んで、痛みが出るという考え(損傷モデル)は科学的事実を基に考えると破綻しています。
姿勢や物の持ち上げ方に気を配ったり、コルセットをしても予防効果はありません。
むしろ、そこに捉われていると回復を妨げます。
本当の問題は手付かずでそのままなのですから・・・。
心理的社会的因子(イエローフラッグ)、脳の機能まで含めて対処する必要があります。
新しい腰痛の概念に基ずく治療が有効です。
腰痛がどういうものか?
どういう症状がでるのか?原因は何なのか?有効な治療は?やってはいけないことは?どのくらいの期間で治るのか? 等々
ご存知でしょうか?
聞きかじった知識や自分自身の体験などの限られた情報を基に考えて、対処していませんか?
腰痛が治らずに長引いている原因を自ら作ってしまっている可能性があります。
より真実に近い科学的事実に基づき考えることが重要です。
その上で、何をするのか自由に選択されると良いと思います。
このような実証研究によって得られた事実を元にして、再構成された新しい腰痛の概念に基づく治療が有効です。