交通事故による慢性疼痛
エビデンス
その1
自動車事故後に慢性疼痛を訴える335名を対象にした多施設共同研究によると、患者の48%が腰痛の既往歴を、42%が頚部痛の既往歴を、76%が共存症の既往歴を申告しなかったことから、事故直後の病歴聴取の妥当性は低いと判明。http://1.usa.gov/uq3kw9
交通事故を契機に慢性疼痛が発症することがありますが、実はその背景に心理・社会・経済的リスクファクターが潜んでいます。これを見逃すと難治性の慢性疼痛へ移行してしまいます。十分に気を付けなければなりません。
その2
(自動車事故後に慢性疼痛を訴える335名を「他人の過失と認識」群と「他人に過失なし」群に分けて医療記録を比較した結果、前者の自己申告は腰痛や頚部痛の既往歴とは2倍超、心理的問題の既往歴とは7倍超の不一致が確認された。http://1.usa.gov/uq3kw9
被害者意識の有無によって患者が語る既往歴に大きな隔たりがあることは覚えておくべきです。臨床現場でよく経験するようにこの被害者意識が治療を困難にするケースが多々あります。
その3
自動車保険制度のないリトアニアにおいて、過去3年間に追突事故に遭った202名と交通事故の経験のない202名を対象に、頚部痛・頭痛・腰痛・神経障害などの有無と頻度を詳細に比較した結果、両群間に有意差は認められなかった。http://1.usa.gov/RMVVaL
むち打ち症は後遺症が怖いという話をよく耳にしますし、それが常識のように思われがちですが事実ではありません。追突事故によって長期にわたる障害など起こらないのです。むち打ち症による後遺症などただの迷信にすぎません。信じられない人は置いて行きます。
考え方
交通事故によって発生した慢性の痛みは「損傷による急性の痛み」が長引いているのではなく、心理・社会・経済的因子の影響によって「脳による痛みを抑える働き」が低下しているからと考えられています。