脊椎固定術の有効性は?

手術
エビデンス
その1
脊椎固定術に関する論文47件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均68%だったが、論文によっては15%~95%の開きがあり、研究デザインにも不備があるため脊椎固定術の有効性を示す証拠は見つけられなかった。http://1.usa.gov/pdP0Eg
腰椎の手術の中でこれほどコストパフォーマンスの悪い手術はありません。それにもかかわらず盛んに行なわれているのですから不思議です。医療仕分けの筆頭に挙げられるのも当然ではないでしょうか。
その2
脊椎固定術を受けた労災患者と保存療法を受けた患者を比較した後ろ向きコホート研究によると、椎間板変性、椎間板ヘルニア、神経根障害と診断された労災患者の固定術は、活動障害、オピオイドの使用、長期欠勤、復職困難を増加させる。http://1.usa.gov/dukXZa
腰椎の手術の中でもっとも費用対効果の悪い脊椎固定術はそろそろやめてもらいたいものです。腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法を試しましょう。
その3
脊椎固定術を受けた783名の中から労災患者60名の転帰を調べた結果、2年後の改善率は活動障害が19%、健康状態が16%でしかなく、疼痛スコアもかなり高かったことから、労災患者に対する脊椎固定術は危険な賭けでしかない。http://1.usa.gov/rfDCbl
自分が患者だったら脊椎固定術を受けようと考える脊椎外科医はほとんどいません。そのことは知っておいた方がいいでしょう。
その4
脊椎固定術を受けた労災患者1,950名を対象とした後ろ向きコホート研究によると、術後2年後の活動障害は63.9%、再手術率は22%、合併症は11.8%に認められた。長期活動障害の予測因子は心理社会的因子であることが判明。http://1.usa.gov/puf71g
術後2年経過しても64%に活動障害が残っているのなら有効な治療法とはいえません。もっと費用対効果の高い安全な治療法があります。
その5
脊椎固定術を受けた労災患者185名を対象とした後ろ向きコホート研究によると、41%がQOLに変化がないか悪化した。再手術率は24%、長期活動障害率は25%、癒合率は74%。転帰不良の予測因子は心理・社会・経済的因子。http://1.usa.gov/o59zzE
手術をしても変化がないか悪化する患者が41%もいるのなら、最初からイエローフラッグ(心理社会的因子)に目を向けるべきでしょう。
解釈
手術する際には、手術方法による成績の違いについて医師と相談し納得の上で受けてください。
新しい腰痛の概念に基ずく治療が有効です。
新しい腰痛概念とは
これまでは「生物学的損傷」という画像の異常所見や肉体への負担が原因というものでした。それを「生物・心理・社会的疼痛症候群」という心理的要因や社会的要因も原因であるというものです。
治療
原因が一つではなく、いくつかの要因が重なって、絡み合っています。ですから、身体だけでなく、心理的アプローチも含めて多面的に集学的に行うことがとても重要です。単一の治療で改善するのは困難です。