腰の負担を減らしても腰痛予防できない
エビデンス
その1
ボーイング社の航空機関連従業員3020名を対象に、職業性腰痛の予測因子を4年間にわたって追跡調査した結果、仕事に対する不満と経済的問題(生活困窮)が腰痛発症による労災補償請求と関連。非物理的因子が関与している可能性。http://1.usa.gov/OORV9j
非常に費用のかかる脊椎関連の就労障害を食い止めるためには政府が職場環境の改善命令を出すべきという専門家の主張もありましたが、エビデンスは(科学的証拠)は腰への負担を軽減することで腰痛を予防できるという説を支持していません。
その2
航空機組み立て工場に勤務する男性269名を対象に、職業性腰痛の予測因子を1年間にわたって追跡調査した結果、労災補償歴と腰痛再発による労災補償請求とが相関することが判明。腰痛は人間工学的問題とは無関係である可能性を示唆。http://1.usa.gov/R6YGav
人間工学的介入によって腰への負担を減らして腰痛を予防しようという試みが行なわれていますけど、それで腰痛が予防できるというエビデンス(科学的証拠)はありません。
新しい腰痛の概念に基ずく治療が有効です。
純粋な身体への人間工学的介入では、ほとんど効果をあげられない理由はここにあります。
非物理的因子の心理学的行動学的因子、社会的経済的因子、職業的因子が発症、慢性化、再発率、手術成績に影響します。
このような実証研究によって得られた事実を元にして、再構成された新しい腰痛の概念に基づく治療が有効です。
補足
A,心理学的行動学的因子
不適切な信念、不適切な対処、疼痛行動、変化への意欲、悩み、医原病的因子
B,社会的経済的因子
家族関係、労働環境、障害保険や労災補償、訴訟
C,職業的因子
職業的満足度、労働条件、雇用形態、企業の姿勢や社会政策